2015年7月6日月曜日

イギリスで親知らずが突然痛くなった!

概要

イギリス留学中に親知らずが痛くなった。加入している海外旅行保険で歯科治療は対象外。大学がNHSへの登録サービスを提供していて、幸運にも痛くなった翌日にNHS歯科医院で診察を受けることができた。

歯茎が痛い

パリ旅行から帰り、新しいシェアハウスへの引っ越しを済ませた。普段通り大学に行って研究していると、突然左奥の親知らずに違和感が。歯茎のあたりに痛みがある。

すぐに治るだろうと気にせず放置していたら夕方から激痛に変わった。口をまともに開けない。歯茎の周辺を常にラジオペンチで締め付けられているかのような、継続的な痛みがある。口を開けないのでご飯は食べられない。痛みが連続的なので、夜は眠れなかった。また、歯茎の炎症の範囲が徐々に広がっているようだ。これは適切に処置しないとまずい!

対処療法

翌朝、とりあえずBootsに行って痛み止めと塗り薬を買った。塗り薬は歯茎に直接塗るタイプで、両方併用できる。効果はてきめんで、口を開いて食事できるようになった。

上:痛み止めのNuromol
下:塗り薬のCorsodyl

海外旅行保険

日本の所属大学の規則で、留学の際には海外旅行保険に加入することが義務づけられている。まずはその保険事務所に電話してみた。会話は英語ではなく日本語でできた。
  • 『こちらA保険コールセンターのXと申します。加入者番号を教えて下さい。』
  • 「Yです。親知らずが痛くなったので電話いたしました。」
  • 『お客様の契約では歯科治療は対象外となります。お力添えできず申し訳ありません』
  • 「こちらこそ、お手数をかけて申し訳ありません(詰んだ・・・!)」

イギリスの国民保険サービス NHS

イギリスには公的医療機関と私的医療機関がある。前者は国民保険サービス(National Health Service; NHS)を通して利用でき、歯科と眼科を除いて原則無料。後者は料金が高いので、保険などで支払いを代替するのが一般的らしい。大学近くの非NHS歯科医に寄ってみたら「初診料£98」を提示された。日本円で19000円くらい。なるほどこれは高い。今回は、私的医療機関を利用するのは最後の選択肢になりそうだ。

NHSについて調べてみた。
6ヶ月以上イギリスに合法的に滞在することが可能なビザを持っている方であればNHSに加入することができます。
まず初めに自分の滞在している付近で利用したい GP(General Practitioner/家庭医又はかかりつけ医)を決める必要があります。
イギリスの医療について :イギリス留学・ロンドン留学なら手数料無料の現地エージェント!ロンドン留学センター
混んでいると適切な治療を受けるまでに1年以上待たされるケースも報告されています。
在英日本国大使館 > 生活情報 > 医療
「今はロンドン内の大多数の歯医者さんが、NHS適用での新規患者は受け付けていないと思うのだけど、歯医者さんが複数いるような大きめの歯科医院だと、新規受付しているかもしれないから、頑張って電話で色々あたってみるといいわよ。」
イギリス歯医者事情&初体験レポート : 朝岡さやかオフィシャルブログ Morning Star
私はイギリスに4ヶ月滞在する。短期なので、NHSに登録するのは無理かもしれない・・・。Webはネガティブな情報であふれている。とりあえず、大学の保健センターに行ってみることにした。この保健センターでは、何を相談するにしてもまず、患者登録が求められる。患者登録フォームが結構複雑で、記入に30分かかった。また、登録時には尿を提出する義務がある。

患者登録をして、親知らずが痛いことを伝えると「では近くのNHS歯科医に行って下さい。NHSには24時間以内に登録されます。」と言われる。保健センターで患者登録をすると、自動的にNHSにも登録される仕組みになっているらしい。Webの情報とは異なり、短期滞在の場合でもNHSに登録して頂けるようだ。すぐに登録してもらえるととても助かると一言伝えて、そのままNHS歯科医をめぐることにした。

NHSの診察予約は111に電話

まずは、サウサンプトンで一番大きいNHSの病院に向かう。Unilinkであっという間に着く。受付の人に診察を予約したいと話しかけてみると「診察を受けたいならまずは111に電話してください。歯科の場合はオプション番号9ね。」と言われる。

日本で緊急通報が119番で提供されているように、イギリスでは緊急性の低い健康相談が111で提供されているようだ。電話してみると、まずはNHSに登録しているか否かを確認された。以下のやり取りはすべて英語だった。
  • 『住所、氏名、生年月日、電話番号を教えて下さい。』
  • 「XXXXです。」
  • 『サウサンプトン大学の保健センターで登録されていますね。どういった症状ですか?』
  • 「親知らず周辺の歯茎が腫れています。痛み止めなしではご飯も食べられません。炎症が徐々に広がっています。」
  • 『ほっぺたは腫れていますか?』(←なかなか聞き取れなくて2回聞き直した)
  • 「いいえ。下顎の歯茎の内側から喉にかけてが腫れています。何かを飲むのも喉が痛くて一苦労です。」
  • 『(他に五つ程度の細かい質問)』
  • 『すぐに病院を紹介します。ちょっと待っていて下さい。(爽やかな音楽が流れる)』
  • 『残念ながら、現在紹介できる病院はありません。見つかりしだい、こちらから電話いたします。』
  • 「ご丁寧にありがとうございました。」
どうやら、緊急性の高い医療相談と判断して頂けたようだ。けど、このまま電話がかかってこなかったらまずい。というのも、痛み止めは3日以上連続した服用が禁止されているし、炎症の範囲は徐々に広がっている。3日以内に炎症を何とかする必要がある。電話がかかってこない前提で、市内の評判の良い非NHS歯科医を調べてバス停に向かっていると、NHSコールセンターの歯科医から電話がかかってきた。
  • 『診察可能なNHS歯科医が見つかりました。今日の16:50から予約をしたので、A歯科医院に行ってください。』(Aが聞き取れない)
  • 「予約してくださったんですか。ありがとうございます。正確な住所を教えてください。」
  • 『歯科医院の住所はXXです。』(←正確に聞き取れてる自信が全くなかったので数回聞き直した)
  • 「イギリスの医療制度を尊敬します。予約までしていただき、助かりました。」
  • 『(朗らかな笑い声)お大事に』
なんとかなりそうだ!

NHSの歯科医院で診察

予約の40分前に歯科医院に向かった。受付では氏名と生年月日を聞かれ、ちゃんと診察が予約されていた。料金は前払いで£18.8。私的医療機関で提示された初診料£98とは大違い。

個室に案内されると、歯科医師・助手と私の二対一で診察が始まった。歯科医師の英語は非常に明瞭で100%聞き取れた。私の言葉足らずな発言もすべて意味を汲み取って理解してくれた。英語で歯医者の診察を受けるのは初めてで不安しかなかったが、全く問題なかった。たぶん、病院で診察を受けるよりも、初めて行くSubwayで注文する方が難しいだろう。それくらい診察は快適だった。また、歯科医師が説明する重要な内容は全て助手がメモしていて、あとでそのメモをもらえた。これなら、リスニングに問題がある患者でも正確に診察内容を理解できる。

幸い虫歯などは見つからなかったので、抗生物質の処方だけで済んだ。処方箋を受け取って、薬局のprescriptionカウンターに向かう。薬は£8した。抗生物質が効き始めるまでには24から48時間かかるらしい。痛み止めと併用できないので、飲んだ後はしばらくつらかった。痛すぎて眠れない。炎症の範囲がさらに広がり、上顎まで痛くなっている。早め早めに行動して良かった。飲んで30時間経ってからは痛みがほとんど消えた。

まとめ

イギリスには公的医療機関と私的医療機関の二つがある。症状が保険の範囲内ならば、私的医療機関で診察を受けるのが最も早い。保険の範囲外の場合は、NHSに登録して公的医療機関を利用すると安く済む。サウサンプトン大学の場合は、大学を経由すれば早くNHSに登録してもらえる。NHSの歯科治療はなかなか診てもらえないことで有名だが、緊急性の高い症状の場合は早く診てもらえることもある。